mariage~酒と肴、それから恋~《3》
「三井くんも、普通の人だったんだね~」

しみじみモンブランを味わう。


三井くんは不思議そうに小首を傾げた。

「普通ってどういうこと?普通だよ。今も昔も」


「今思うと、大学ん時の私にとって、三井くんは別世界の人って感じだったもん」


「別世界?」


「フットサルしてる三井くんをフェンス越しに見てた印象が強いからかな」


フェンス越しに片想いしてる時代が長かったから。

フェンスで世界が分断されてる、…みたいな。


「…俺たち、付き合ってたのに?」

困惑したような納得いかないような口調。


「付き合えても、緊張して、他人行儀っていうか、少なくとも対等じゃなかった。心に距離があった」


「キスまでして、距離あったなんて、ちょっと傷つくな」

拗ねたような声。三井くんはハイボールをくいっと飲んだ。


「あはは、ホントだね。キスしたってのにねぇ」


酔いが良い感じにまわってきたからか、少し大胆な会話も抵抗なくなってた。
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