mariage~酒と肴、それから恋~《3》
むしろ、あの頃の私の気持ちを今更でも知って欲しい、そんな気持ちになった。


「キスしてちょっと近づけたみたいで嬉しかったけど、でもまだ遠い人みたいだった。

私たちの間にはまだフェンスが残ってた。そんな感じ」


物思いにふけつつ、グラスを揺らす。沈黙の中にカランと氷の音が鳴る。


「―…今は?」

視線を感じて顔を上げると、三井くんは勿体ぶったように、じっと私を見つめながらゆっくり口を開いた。


「今なら、俺たちキスしたらどこまで近づける?」


顔を傾けて、身を乗り出してくる。


申し合わせたようにお互い瞳を閉じて唇を合わせた。


ウイスキーとモンブランの味わいがまた深く溶け合う。


唇をついばむ音が密室に響く。


そう、思惑通りの展開だ。

あわよくばこうなればいいと、部屋までついてきた。
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