mariage~酒と肴、それから恋~《3》
思い出すと、胸は締め付けられるけど。


仕事するしかない毎日。久々に女に戻れた気がした。

それで十分じゃないか。


欲を言えば、最後、寝顔にキスくらいしてくれば良かった…なんてね。


『皐月さん、お客様です』


昼頃。受付からかかってきた内線。


「どちら様?」


『スッゴい男前♪どういう関係なんですか?皐月さんたら、すみに置けないんだから~』

受付嬢に茶化されつつ聞いた客人の名前に、鳥肌が立った。


会社の玄関に降りるため急いで階段を使う。

「…うそでしょ?!何で、まさか、来るなんて」

思わず漏れ出す心の声。

何度も脚がもつれそうになった。

動悸がする。


「三井くん!」


玄関脇の待ち合いスペースのベンチに腰かけていた三井くんは、私の姿を見て立ち上がった。


明るい場所で見たスーツ姿の三井くん。

思わず見とれてしまう。やっぱかっこいいなぁ~。


「どうして、うちの会社に…?」


戸惑いつつ聞いたら、眉間にシワを寄せてる。

…怒ってる?
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