mariage~酒と肴、それから恋~《3》
すると、三井くんは開口一番言い放った。

「また俺から逃げんのかよ」


「――へ?」

意味が分からなくて、間抜けな声が出た。


「会社名しか聞いてねぇもん。連絡先聞いてないし、黙って帰るなんて反則だろ」


「あ。ゴメン。高いウイスキーご馳走になってお礼も言わず…。ありがとう。美味しかったぁ」

てへ、と頭をペコッと下げた。


「そんなんどうでも良いんだけど」

整った顔をさらに不愉快に歪める。


「何、怒ってるの?」


「俺、遊ばれただけ?」


「――はぁ!?遊んだのはそっちでしょ?!三井くん彼女いるんだよね?」

腹が立って強く言い返した。


「彼女?」

何の話?と言わんばかりの反応。とぼけるつもり?!


「洗面所に…」

言い切る前に、三井くんはハッとした顔をした。


――ほら、やっぱり。

分かってたことなのに、ズキンと胸が痛んで、三井くんから視線を反らした。
< 16 / 19 >

この作品をシェア

pagetop