mariage~酒と肴、それから恋~《3》
恋に舞い上がって、地に足ついていなかった。そう、若かった。ただそれだけ。

今思えば、よくある若い頃の恋愛の失敗談の一つ。


モテる彼の取り巻きの女子たちがトイレでしゃべってた。

私はトイレの個室の中で聞いてしまった。

三井くんには他に女がいるとか、私はどうせ遊ばれているだけとか、そんな話だった。


真偽は確かめなかった。

私が選んだのは、三井くんから逃げること。

自分に自信がなくて、傷つきたくなくて…。

疎遠になって、卒業して、携帯も変わったし、それっきり。


「皐月、この辺住んでんの?」

って聞いてきた三井くんに、終点まで来ちゃった顛末を説明する。


「タクシーで帰ろうと思って」

タクシー乗り場を指差す。

まだ行列ができてる。来るタクシーの数も少ない。


「大変だな~。かくいう俺も休日出勤で残業。仲間だな。でも俺はここが最寄り駅なんだけど」


不思議。

気まずく自然消滅したってのに、今、普通に向き合えてるなんて。
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