翼をなくした天使達
「じゃ……私死んでないの?」
あの日は確か曇り空だった。午後から豪雨が降ると天気予報で言っていてジメジメと空気も悪かった。
工事現場の足場に止まるカラスがこっちを見ていて、それが最後に見た景色。
空も天気も最悪だけどこれが青空だったらもっと虚しくなったと思うからこれでいいんだと自分に言い聞かせた。
「だから分からねーって何度も言ってんだろ。
まぁ、死んでたらこんな所にいない……」
「ねぇ、なんで私を助けたの?」
蒼井の言葉にわざと重ねた。
私は死にたかった。終わりにしたかった。それなのに私はまだ私でいる。肉体も心もそのままでこんなの私が望んだ結末じゃない。
「蒼井こそ中途半端な事しないでよ。もし死んでなかったらどうするの?元の世界に戻るの?蒼井はそれを望んでるんでしょ?」
蒼井がどんな現実を生きていたかは知らないけど私よりはマシなはず。元の世界に戻っても蒼井は平気かもしれないけど私は無理。
「本当に死にたかったわけじゃないくせに」
蒼井のその一言でプツリと何かが切れた。
「なにが分かるの?私がどんなに苦しくてどんなに辛かったか蒼井には分からないでしょ?あんな場所に帰らなきゃいけないなら私はこっちでもう一度死ぬ」
私を否定するあんな世界、消えてしまえばいいのに。