翼をなくした天使達

笑ったら笑い返して
言われたら言い返して
叩かれたら叩き返して

傷つけられたら傷つけ返す。

それを平気でする人が生き残って、できない人が生き残れないあんな世界なんて……


「お前泣いてたよ」

蒼井の言葉に私は顔を上げた。

「は？なにが？」

「落ちる時。落ちてる間もずっと泣いてた」

蒼井の顔がいつになく真剣だった。

泣いてた？私が？もう涙も枯れ果てて絶望しか残ってなかったのに？

「知らないそんなの。やっと終わりにできるって安心して泣いたんじゃないの」

きっとそうだ。

もう家に帰らなくていい。もう学校に行かなくていい。そうすれば誰も私を傷つけない、傷付かないで済むって安心して涙が出た……

「悔しくて泣いてた」
「え？」

「まだ死にたくねーのにって。そう泣いてるように俺は見えたよ」

嘘だ。そんなのは嘘。

私は生きる方が辛かった。明日が来るのが怖かった。

それから解放されたくてあの場所から飛び降りた。

それなのになんで蒼井の戯言なんかに涙が出るの？

「私にはもう帰る場所なんてない」

それに気付いて欲しくなくて、私は膝で自分の顔を隠した。

私は私以外の何かになりたかった。屋上から飛び降りたらきっとそれは叶うと信じてたんだ。