翼をなくした天使達



「ねぇ、蒼井。蒼井はこの世界を私の為だけの世界だって言ったけどもしそうならこれも私が望んだ事だったと思う?」

確かにここは私の都合にいい場所だった。

仲の悪かったお母さんとお父さんは仲良しで、
温かいご飯と優しい家族は私が欲しかったもの。

私をいじめていたまりえは同じような目に合っていて、助けた美保とは友達同士になっていた。

ここはリアルじゃないのにリアルで違う世界なのに現実で起きた事と重なったりして、

もしかしたらそうなったらいいのにとか、こうしたら良かったとか思う事をやり直してるんじゃないかって思う。

やり直すチャンスだったんじゃないかって。


「だけど結局私はこっちでも余計な事ばっかりして全然ダメだった。私の都合のいい世界ならさ、
もっと何もない綺麗な所が良かったよ」

「……でも現実も今もいじめを放っておけなかったのはお前だろ?」

「でもそれはみんなが……」

「誰かのせいにするな。あの時はとか、あの時に、とかそん時に考えて言ったりやったりしたのは自分なんじゃねーの?それなのにあれは私の意思じゃないなんて、今さら言って何になるんだよ」

私はギュッと拳を握った。

蒼井の言う通り私はずっとずっと〝あの時に、
あの時は゛って繰り返し自分がした事に後悔してる。


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