翼をなくした天使達
それから教室に行って私は自分の席についた。
後ろで沙織達のグループが騒いでいてその中に美保もいる。
あの日以来、美保とは喋ってない。
周りからはただの喧嘩だと思われているけど、
美保から離れていった以上私には何も出来ないし、一人でいる事には慣れてるから大丈夫。
私は休み時間あの花壇に行ってみた。
裏庭の花壇はまだ土のままで芽すら出ていない。
………って当たり前か。まだ数日しか経ってないんだし。
するとチャポンと水の音がして振り向くと橋本さんが如雨露を抱えて歩いてきた。
「あ、紺野さん」
記憶を思い出してからはじめて聞く橋本さんの声。
確かにまりえと同じだけどこっちの橋本さんはゆっくりと丁寧に話すから違って聞こえる。
「えっと……私の顔になにか付いてる?」
じっと見すぎたせいか橋本さんは困惑していた。
「漏れてる」
「え……?」
「如雨露の水」
ポタポタと穴から漏れる水はくっきりと乾いた地面に跡が付いていた。
「わわ、本当だ!全然気付かなかった」
慌てる橋本さんの姿を私はまた見つめてしまった。
話し方も仕草も全く違うけど橋本さんはあの
〝まりえ゛なんだよね。今でもそれが信じられないけど。