翼をなくした天使達
●近付く距離
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その日は何故か朝から頭痛がしていた。
……またか、と思って放置してたけど全然治まらなくて、私は頭痛薬を貰いに保健室に向かった。
「あら、紺野さんどうしたの?」
「先生……頭痛薬ありますか?」
ズキズキと痛む頭。最近は偏頭痛起きてなかったから大丈夫だと思ってたのに……。今日は天気が悪いからやっぱり気温のせいなのかな……
「あらら、頭痛薬切らしてるわね。私の私物で良かったら持ってるからそれ使う?」
「うー、はい…」
「今取ってくるからベッドに横になって待ってて」
先生が急いで出ていった後、私はベッドにすぐさまた倒れこんだ。真っ白なシーツからは消毒液の匂いがして硬いマットは苦手だけど今はそれどころじゃない。
外からは雨の音がしてきて本格的に降り始めたみたいだ。
元々偏頭痛持ちじゃないし気圧の変化で体調が変わるなんて事はなかった。これも何か関係があるんだろうか……
そう思いながら目を瞑ると短い夢を見た。
私は上空から何かを見ていて、叩き付けるような豪雨は街全体を濡らしていく。
ザザザっとうるさい音。雨に混ざって見える赤い〝何か゛。ペンキのように綺麗なその色は地面に溶け込んで、雨の道をゆっくり流れていく。
私はただそれを見つめるだけ。
ピクリとも動かない二つのモノ。それに触れようとした瞬間、私はガバ!!と目が覚めた。