翼をなくした天使達
「紺野さーん」
午前の授業が終わり昼休み。保健室の先生がひょっこり廊下から顔を出した。
「制服乾かしておいたから後で保健室に取りにおいで」
「え!本当ですか?」
学校で美人と評判の先生は中身も完璧。詳しく聞くとなんでもわざわざドライヤーで乾かしてくれたらしい。今日は1日雨みたいだし自然乾燥は諦めてたからすごい助かる。
「ありがとうございます!今持ってきてもいいですか?」
「いいわよ。制服は窓際に掛けてあるからね。
私はこの後職員室に行かないといけないから」
ただでさえ短い昼休み。私はお母さんが作ってくれたお弁当を無理やり口に押し込めてモグモグしながら保健室へと向かった。
─────ガラガラ。
「失礼しまーす」と誰も居ないのに癖で言ってしまった。ドアを開けるとすぐに私の制服が目に入った。
良かった……本当に乾いてる。
少し湿気くさいけどダサいジャージで過ごすよりはマシ。ここで着替えちゃいたいけどどうしようかな。
私は保健室のカーテンを閉めてとりあえずドアは内側から鍵をかけた。誰も来ないだろうけど念の為。
ジャージのチャックを下げて上着を脱いだ瞬間……
「へっくしゅんっ!!」と大きなくしゃみに思わず飛び上がった。
え、まさか人がいる?
ドキドキと心臓の音が伝わりやすいのは恐らく私が下着姿だからだろう。急いでYシャツを手に取ったけれどそれと同時に声がしたベッドのカーテンが開く。
「あ、お前……」
「……っ!」
その人物を見て私は思わず脱いだ上着をその人に投げた。
「へ、変態!なんであんたがここに居るの?」
それは今朝の不審者の男。美保が言ってた1組の人かどうかは分からないけど状況は今朝より最悪。
「は?てめぇが後から来たんだろ」
男はそう言うとまた私を睨んで投げた上着を投げ返してきた。
うぅ……やっぱり怖い。