翼をなくした天使達



「おい、急に起き上がるな」

びっくりして横を見るとそこには蒼井が立っていた。

まだ鮮明に残っているさっきの夢。屋外でもないのに私の身体は冷たくて指先がわずかに震えていた。

「……今なにかした?」

「は?してねーよ。保健室に来たらお前が寝ててうなされてるから熱でもあんじゃねーかって今…」

あぁ、それで蒼井の右手は行き場を無くしてるのか。

「なに?具合悪いの?」

蒼井の顔を見たら少し冷静になって私は息を深くはいた。

「ちょっと頭痛がひどいだけ。今は……あれ、平気みたい」

気付くと痛みは消えていた。あんなにズキズキとひどかったのに嘘みたいに何にもない。

「はっ、また仮病だろ」

蒼井はそう言って鼻で笑う。

「違うし!蒼井こそどうせまたサボりでしょ」
「俺は今日1日ちゃんと授業受けたけど」

「へぇ、そうですか。どうせ寝てたんじゃないの。それは授業受けたって言わない……って……
ん?」

今日1日って言い方おかしくない?

だって私午前中の休み時間に………ふっと窓の外を見ると雨は止んでいて夕焼け雲が浮かんでいた。

「え……え?なんで夕方?いま何時?」

「3時48分」

嘘でしょ……完全に授業終わってるじゃん。ってか私ずっと寝てたって事?感覚的には5分ぐらいのつもりだったのに。


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