翼をなくした天使達
蒼井は歩くスピードが早くて私はいつもより大幅で歩いた。元々雑談なんてするタイプじゃないから私が話しかけないとずっと無言のまま。
「あ、あのさ。蒼井の家って逆方向なんじゃなかったっけ?」
沈黙に耐えられなかったのは私。
もうすぐ家の近所だけど何故か蒼井はまだ一緒に歩いてる。………もしかして私が具合悪いから送ってくれてるとか?
「俺が帰るの駅前のネカフェだし」
だよね。たまに優しくても蒼井がそんな紳士的なわけがない。
「家に帰らなくて平気なの?」
「別に」
そういえば前にヘドが出るあの家とか言ってたっけ?自分の事で精一杯で蒼井を気にした事がなかったけど、蒼井って現実世界ではどんな生活してたのかな?
ムカつく奴らは変わらないって言ってたからやっぱり喧嘩っ早い不良?
「蒼井ってさ、現実でもそんな感じだったの?」
「なにが」
「誰とも一緒にいないってゆーか昔からそんな
一匹オオカミだったのかなって」
「まぁ、中学までは普通に話す人とかいたけど」
「けど?」
「詮索すんな、ブス」
はい。出た出た。
なんでいちいち語尾に余計な言葉がつくのかな。
もう慣れちゃって何とも思わない自分が怖いけど。
「いいじゃん別に。現実の事とか話せるの蒼井しかいないんだし。ってか私の事は全部知ってるくせにね?」
「俺から聞いた事は一度もねーけどな」
「は?相談くらい乗ってやるって言ったじゃん」
「そうだっけ」
蒼井と普通に話してるのが不思議だ。