翼をなくした天使達
最初はただ怖い人で関わる事も避けてて、そういえば初めて会った場所もこの道だったっけ。
言いたい事は言うしウジウジしてる奴は大嫌いで、きっと蒼井は私の事苦手だと思う。私だって蒼井の事は苦手だったけどそれでも今は別の感情もあったりする。
「私もさ、蒼井みたいに強かったらもっと色んな事踏ん張れたかもしれないね」
こんな私でも譲れないものがあって、
温かいご飯が食べたかったとか、
名字をどうしても変えたくなかったとか、
いじめを見過ごせなかったとか、
やり返せなかったとか、
色んな事があるけど、それは間違いじゃないと許せた日からなにか方法があったんじゃないかって、あの出口のない迷路から抜け出す事ができたんじゃないかって今さら思ったりもする。
「……後悔してんの?」
いつの間にか蒼井は少しだけ私の歩幅に合わせていて、コンクリートに映る影が二つ並んでいた。
「まさか」
私は笑みを浮かべながらそう答えた。
自分で死を選んだ事。
あれは衝動的にしたわけじゃない。
悩んで悩んで悩んで決めた事。それしか逃げる道がなかった。あの日の自分を否定したくない。