翼をなくした天使達
案の定、噂は広まってしまって証拠もないのに蒼井が犯人扱い。
「去年の事件の犯人もあいつなんだって」
「そういえば停学になってた時あったよね?」
あっちでもこっちでも蒼井の事ばかり。
私は何故か自分の事のようにイライラして、休み時間屋上のドアを勢いよく開けた。
「ちょっと蒼井っ!!」
保健室と非常階段は探したから居るとすればここしかないと思った。
「うるせーな。ただでさえガサツなんだからドアぐらい静かに開けられねーのか、お前は」
「え、あ…ごめん」
「ったく。せっかく昼寝してたのに台無し」
蒼井は不機嫌そうに木陰で寝そべっていた。本人は至って普段通りだけど今は昼寝なんてしてる場合じゃない。
「ちょっとあんたが犯人って事になってるけど?
」
「あー」
「いや、あーじゃないよ。否定しなよ!じゃないと…」
「どうでもいいし」
………はい?今どうでもいいって言った?
蒼井はまるで昼寝の邪魔みたいな目で私を見てるしなんなの?せっかく心配して探しにきたのに。
「あのさ、言っとくけどマジで言いたい放題言われてるよ?」
落書きしたスプレーは万引きしたやつだとか、
実は暴走族のリーダーだとか、
挙げ句の果てにはお財布盗んでるの見たとかありもしない事ばっかり。聞いてるこっちが口あんぐりだよ。
「だからどうでもいいって。邪魔だからどっかいけ」
その態度にムカついたけどはっきりさせなきゃ
このまま戻れない。
「じゃ、1年の時の事件。あの時の犯人って蒼井なの?」
「……」
問題を起こして停学処分になった事は知ってるけど詳しい事は知らないし。
「詮索すんなって言っただろ。うぜー」
「詮索じゃないよ!みんなそう言ってるよ!だから事実かどうか聞いてるんでしょ?」
「じゃ、そーいう事でいいんじゃね?」
「……もういい」
私は呆れて屋上を出た。