翼をなくした天使達

●隠れた本音

　



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次の日、教室や廊下の落書きは綺麗に消えていた。清掃業者を頼んだらしくスプレーの跡さえ残っていない。

だけど盗まれたお金が戻ってくるわけでもなくて騒ぎはまだ続いていた。

「なんか落書きの文字、蒼井翔也の字にそっくりらしいよ」
「だからあいつで決定だって！」
「盗みやる人って癖になってる人多いって聞くしまたされそうでこわーい」

疑惑だったはずがいつの間に確信に変わってるし。

あいつが落書きなんて幼稚っぽい事するはずないじゃん。そんな暇あったら「寝る」とか言いそうだし。

だけど当の本人があの調子だし別の意味でため息が出る。


「あの先生……」

でもやっぱりどうでもいいと思えなくて私は濱田先生を頼った。

「ん？どうした？紺野」

廊下で呼び止めたはいいけどなんて言えばいいんだろう。

「事件の犯人ですけど私昨日駅前で見ました。
多分卒業生だと思うんですけど〝保坂゛って呼ばれてる人がいました」

信じてもらえるか分からないけど蒼井じゃない事は確実だから。

「保坂？それって保坂幸成の事か？」

───保坂幸成(ほさか　ゆきなり)

その名前を口にした先生はあははと笑い始めた。


「保坂は違う違う。この前学校の近くを通ったからって顔を見せに来てくれたけど、保坂はそんな事件起こすような馬鹿じゃないよ」

なんだかそれに違和感を感じた。

確かに見た目は真面目そうだったけどタバコ吸ってたし不良達とも親しげだった。そんなに違うと言いきれないと思うんだけど………


「その保坂って人、いつの卒業生ですか？」
「去年だよ。お前達が１年の時３年で生徒会長やってただろ？覚えてないか？」

生徒会長？

あんまり記憶にないけど生徒会長って先生達からすごい信頼されてるイメージがあるし成績も優秀じゃないとなれないからやっぱり私が昨日見た姿とズレがある。

先生が言ってる保坂って人と昨日の人は違うのかな？でもあんまり聞かない名字だしな………