翼をなくした天使達



蒼井は当時を思い出すように遠い目をした。

きっとすごく悔しかったはず。聞いてる私だって悔しい。

「ひどいね」

それしか言葉が出てこない。

「んでとりあえず処分保留にされて。ムカついて保坂の所に行ったけどあいつニヤついた顔でしらばっくれやがって。それで思わず手が出そうになった所をまた教師に見つかって引き戻されたってわけ」

「……」

「いま考えればそれもあいつの計算だったと思うけど」

「それで停学処分になったの?」

それを聞くと蒼井はまた黙ってしまった。壁にもたれかかった体勢からあぐらに変えるとまたポツリと話してくれた。

「いや、本当は退学になるはずだった。それを率先して言ってたのが濱田の野郎で」

「濱田先生が?」

「退学の生徒を出すと学校のイメージが、とか中卒になると将来的にとか擁護してくれた奴らもいたけどあいつだけは元々素行の悪い生徒だったし中卒になっても変わらない、クズはクズだってでかい声で主張してたよ」

うわ……最低。

でも現実の濱田先生ならそれを平気で言うから怖い。私の事だって簡単に切り捨てたしそういう奴だよ。あの人は。


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