翼をなくした天使達



「あーうるせー。ペラペラ下らない事言ってんのはお前だろ?」

その声を聞いた瞬間、泣きそうになった。

蒼井は睨むわけでもなく、ただじっと保坂の事を見ていた。それに耐えきれず取り乱したのは保坂の方。

「先生、こいつが事件の犯人なんですよね?
だったら早く警察につき出さないと!」

「保坂君……落ち着いて」

「こういう馬鹿は本当に何するか分かんないんですよ?刃物とか持ってるかもしれないし、もっと大きな事件起こすかもしれな……」

言葉を待たずにグイッと保坂の襟を掴んだのは蒼井だった。

「ほらね。すぐ暴力振るおうとするでしょ?」

保坂は蒼井と目を合わさずに周りの人達に訴えている。その姿がなんていうか……哀れだった。

すると蒼井はやっと口を開いて何故かニヤリと笑った。


「お前さ、俺の事気に食わないみたいだけど正直どうでもいいってゆーか俺、お前に興味ないんだよね」
「………」

「だから勝手に頑張って」

そう言うと蒼井は殴るどころかそのまま手を下ろした。

「帰るぞ、ブス」

……え、はい?ブスって私の事だよね?
別にいいんだけどみんなの前でブスとか言う?

こんな時ぐらい違う呼び方なかったのかな。


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