翼をなくした天使達


蒼井がこれでいいと言うなら私もこれでいい。

真実はいずれ分かるだろうし、私は保坂のやり方が汚くて許せなかっただけで蒼井に恩を売ろうとかそんな気持ちも一切ない。

ただあの日一緒に居たってみんなの前で言いたかっただけ。

「ちょっと待てよ蒼井。どうせ父親の力を使えばなんでも出来るからそうやっていつも余裕なんだろ?」

歩き出す私達に向かって保坂が叫んでいた。

恐らく殴ったり蹴ったりするより、無関心という枠に入れられた事の方がずっとダメージだったみたい。

もう本性は隠せてないし周りも気付きはじめてるし、その裏の顔が剥がれるのも時間の問題だろう。

それでもシカトする蒼井に保坂がさらに叫ぶ。

「お前はいいよな!勉強しなくても悪さしても将来安定した未来が待ってるんだからさ!」
「……」
「なぁ、蒼井なんとか言えよ!」

「馬鹿じゃないの?」

それに答えたのは私だった。

蒼井がもしなにもしないでお父さんの決めた将来でいいやって思えてたら出来損ないだって言われて傷付いたりしない。

すでに決められた道なんて進みたくないから蒼井は蒼井なりに反抗してる。それがお父さんが居るからだとか、将来余裕だからだとか、何を根拠に言ってるわけ?


「勘違いもいい加減にして。蒼井の将来は蒼井が決めるしあんたには関係ない。だからもう2度と関わってこないで」

それを言えたらモヤモヤしていた気持ちがスッと消えた。



< 140 / 196 >

この作品をシェア

pagetop