翼をなくした天使達
その帰り道、蒼井は相変わらず歩くのが速くて、
私達には影ひとつ分の距離が開いていた。
私の胸は今さらドキドキしてきてさらに手も震えてきた。あんなに大勢の前で主張した事なかったし、壇上で賞状を貰うだけで緊張する私が堂々と言いたい事を言えた事にびっくりしている。
蒼井と一緒にいるから性格まで似てきた?
いやいや、私はあそこまで心臓強くないし……
「おい」
ハッと前を見ると蒼井が立ち止まっていて思わずぶつかりそうになった。
「ちょっと、急に止まんないでよね?」
「お前さ、馬鹿じゃねーの?」
………きた。
バレたら怒られる覚悟はしてたけどまさか蒼井があの場に出てくるとは思わなかったし。
「仕方ないじゃん。私は色々な事はっきりさせたかっただけで……まぁ、勝手にやり過ぎたかな?とは思ってる。ごめん」
これで騒ぎが大きくなってしまったかもしれないし、あいつらが犯人だって証拠もいまだにない。
ってゆーかまじで昨日写メ撮っておけば良かったよ……!
もう証拠隠滅されてるだろうし、あーぁ………
「じゃ、勝手にやった事なら礼は言わねーからな」
「え、うん。別にいいよ。ってか…え?お礼言ってくれようとしてたの……痛っ!」
すぐに蒼井のデコピンが飛んできた。