翼をなくした天使達
蒼井だってそんな噂ぐらいどうって事ないだろうし、私も不思議と全然気にならない。
「でもさ、今まで蒼井に聞きたい事とか話したい事とかあっても学校内では場所選ばなきゃいけなかったけど、今度からは堂々を会えるから楽だよね」
二人でいても怪しまれる事はないし、わざわざ隠れる必要もない。
「まぁ、それでも大声で話せない事だらけだから意味ないか」
あはは、と私が笑うと蒼井はなにか言いたそうにこっちを見た。
「な、なに?」
別に強がりじゃないし本当の事。ってかあんまり顔とか凝視しないでくれないかな……
せっかく落ち着いてきたのにまた心がソワソワするじゃん。
「お前まじで変わったな」
………変わった…のかな?
蒼井の嫌いなウジウジはしてないけど、それでもいまだに教室ではご飯食べにくいし弱虫な自分はまだ居ると思う。
蒼井はパンの袋を捨てとけと言わんばかりに私の前に置いて立ち上がった。
「どこ行くの?」
「は?保健室で昼寝に決まってんだろ。お前はくそつまんねー授業でも受けてろ」
時計を見ると昼休みも残りわずか。
「ってかゴミぐらい持って行ってよね?ちょっと聞いてます?」
蒼井は逃げるようにその場を立ち去った。私は渋々食べたものをまとめてひとつの袋にしまった。
まったく、私はパシリじゃないのにさ……!
ブツブツと文句を言ってると突然視界がぼやける感じがした。
………あれ?
目を数回擦ると元に戻って、きっと目に埃でも入ったのだろうと自分の手を見ると私は思わずゴミの袋を落とした。
「え……」
親指から小指。そして手首までが半透明になっていて向こう側の景色が見える。慌てて左腕を見るとやっぱり同じ現象が起きていた。
なにこれ、なにこれ、なにこれ……?
目をまた擦っても何も変わらなくてどうやら目の錯覚ではないみたい。暫くすると半透明は消えていて手をつねったら痛みもあった。
………なに今の?
私は怖くなって足早に教室へと戻った。