翼をなくした天使達
●あの日の事
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あかり、そこのボウル取って」
「これ?ってかオーブンの予熱って何度だっけ
?」
週末、家でゴロゴロしていた私に突然お母さんが
「クッキーでも焼く?」と誘ってきた。
多分テレビでお菓子作りをやっていたからだと思うけど。
普段料理なんてしない私にお菓子作りは難易度が高いけど、作り始めると簡単で今は生地を好きな形に形成中。
「型抜きあるよ?」
「でも色んな形にした方が面白くない?」
「じゃ、お母さんクマ作ろうかしら」
何故クマなのかは分からないけどタヌキを作ろうとしてる私も人の事は言えない。
「~♪♪♪」
お母さんはずっと楽しそうでご機嫌に鼻唄なんか歌っちゃってる。
お母さんとこうして何かを作った事ってなかったし、いいなぁと憧れていた時期もある。そう考えるとこれも私の願いであり、やりたかった事なのかもしれない。
「あかり好きな人いないの?」
突然そんな事を聞いてくるから、星形に形成中の生地がぐにゃりと潰れた。
「え、い、いないよ!」
ちょっと動揺したのは単にびっくりしたからだ。
まさか恋バナになるとは思ってなかったしその準備はさすがにできてなかった。