翼をなくした天使達
私は仕方なくまた学校に戻る事にした。また雨の中を歩かなきゃいけないのは嫌だけどスマホを置きっぱなしにも出来ないし。
憂鬱な足取りを軽くする為にお気に入りの傘をさして行こうと思ったのにそれすら見付からずテンションはがた落ち。
今日は本当にツイてない。
学校に着くと体育館ではバスケ部とバレー部がまだ練習していた。雨でもできちゃう部活って大変そう…とか思いながらただのビニール傘をたたんで校内に入った。
とりあえず自分の机の中も確認しようと教室に行くとひとりだけまだ残ってる生徒がいた。
「橋本さん?」
思わず声をかけてしまった。
「紺野さん……」
橋本さんは何故かボーっと席に座っていて誰かを待ってるのかなって思ったけどきっと違う。
だって橋本さんが誰かといるところなんて見た事ないから。
「どうしたの?帰らないの?」
多分話しかけたのも話すのも初めてだけどつい声をかけちゃったし。
「……傘がなくて…」
「傘?忘れたの?」
私の声がやけに大きく聞こえるのは橋本さんの声が消えそうなほど小さいからだ。
傘を忘れたのかと聞くと橋本さんは首を横に降った。……だよね。朝から雨降ってるし。
「……水色の傘を置いておいたんだけど帰る時にはなくて」
「あー。色の付いた傘はやめた方がいいよ?傘立てに入れとくと目立つし誰かに持ってかれやすいから」
そういえば本当に私の可愛い傘はどこに行ったんだろ?帰ったらお母さんに聞いてみよう。