翼をなくした天使達
「………え、なにこれ」
日が沈んで涼しくなってきた時間。
私は蒼井を公園に呼び出した。
いや、呼び出したっていうほどのものじゃないけどなんとなく「いま暇?」と連絡したら「暇」って返ってきたから。
「逆に何に見えるの?」
私が渡したのは先ほど焼き上がったクッキー。
お母さんが変な事を言うから意識しちゃうけど決してそんなつもりで渡したわけじゃない。
張り切って作りすぎちゃったし学校に持っていっても仕方ないしで、思いつくのが蒼井しかいなかっただけの事。
「いらないならいいよ」
「いらないとは言ってねーし」
蒼井はお腹が空いていたのかすぐに1枚を食べた。そしてもう1枚を口に入れようとしたところで私がストップをかける。
「え?感想とかないの?」
「あー普通?このブタのセンスはどうかと思うけどな」
……それブタじゃなくてタヌキなんだけど。
いや、言ったら言ったで笑われるからブタでいい。
空を見ると綺麗な星空が浮かんでいた。こうして息を吸って季節の香りを嗅いでいるとここが現実じゃないと忘れそうになる。
「最近さ、なんか体が変ってゆーかおかしな事ってあった?」
「は?」
結局蒼井は全部クッキーを完食してしまった。
そのゴミ扱いしてる袋も一応可愛いの選んだつもりなんだけどな……
「例えば体が透けるみたいな……」
「なに?寝ぼけてんの?」
「寝ぼけてないっ!」
やっぱりそんな反応だよね。私だって自分で言ってて変だなって思うもん。