翼をなくした天使達



私が大きなため息をつくと蒼井はやっと冗談じゃないと気付いたらしい。

「……俺には今のところそんな現象ないけど」

だよね。その反応見たら分かるよ。

確かにあの時、私の体は透けていた。あれから胸がざわざわとして落ち着かない。

「私今度は透明人間になっちゃうのかな?」

なんて、ちょっとふざけてみた。透明人間になりたいと望んだ事はないんだけど。すると蒼井は珍しく難しい顔をしていた。

「それって透けてるんじゃなくて、
消えかけてるんじゃねーの?」

「え……」

ドキッとする言葉。

消え……かけてる?私が?

「ど、どういう事?」

恥ずかしいくらいの動揺。だって消えるって私の存在がって事?それともこの世界がって事?

ちょっと急な展開すぎて頭が回らない。

「向こうのお前が呼んでんじゃね?」

今サラリとすごい事を言われた気がする。

「え、向こうって?元の世界の事?」

自分が死んでるのか生きてるのか、それはずっと不確かだったのは事実。でも待って。


「消えかけてるって事はそういう可能性もあるんじゃねーのって話だけど」

「いやいや、それはないんじゃないかな…うん。
蒼井にはそんな現象ないみたいだし、やっぱり私の気のせいだったのかも」

元の世界に戻る………?

あの苦しくて辛かった現実に?

「まぁ、消えない俺はもしかしたら死んでるのかもしれないし」

蒼井はそう言うとベンチから立ち上がって大きく伸びをした。


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