翼をなくした天使達
私は確かに変わった。
嫌いだった自分の事を少しだけ好きになれたし、
あの日々を振り返る事だってできる。
でもそれはもう終わった事だからと開き直れたからで、あの現実の続きがあるなんて考えた事はない。
「………私だって死んでるかもじゃん」
そうじゃないと困るよ。
「お前は多分生きてるよ」
「なんで?」
「んー、そんな気がする」
気がするぐらいで生きてるなんて言わないでよ。
私は強くなれたかもしれない。
でも現実を生きる勇気はない。
だっていま笑えてるのはこの世界のおかげだから。自分の理想や夢が詰まった世界なんだから当たり前だよ。
でもさ、現実は違うんだよ?
もっと残酷で受け入れられない事が沢山あって、
だから私は生きられないと悟った。
「ねぇ、なんで蒼井は責めないの?」
あの時の夢。
まだ蒼井には話してないけど屋上から飛び降りた後のふたりの姿。もし見間違いじゃないのなら、
あれが本当の事ならば蒼井は私を庇うようにして倒れてた。
「私のせいで死んだかもしれないんだよ」
さっきだってそう。
もしかしたら自分は死んでるのかも?なんて平気な顔してさ。蒼井は知らないけど血とか本当にすごくて、全然動かないし目も開けないし、生きてるなんて言えないくらいひどかったんだよ。
なのに蒼井は私を責めない。
お前のせいで、なんて言って怒った事もない。