翼をなくした天使達



すると美保も静かに起き上がって、そのまま私の手を握った。


「信じられないよね…ごめん。急に」

ただ美保にだけは打ち明けたかった。もし私が後で振り返った時この夜に後悔は残したくない。

美保はただジッと私の目を見つめた。


「信じるよ。あかりが言う事ならなんでも」

「……っ……」

この世界が本物じゃないと気付いた日、今の家族も学校も友達もみんな偽物だから笑えるぐらいどうでもよくなったと私は言った。

だけどどうでもいいならこんなに泣けたりしない。

ずっと思っていたけど、認めないようにしてたけど、どうしても溢れ出す。


「私さ……けっこうこの世界が好きなんだ」

ここはとても居心地が良くて、気を引き締めないとずっとここにいたいと思ってる自分がいる。

美保はそっと私を抱きしめた。

「それならここに居なよ。ずっとずっと居ればいいよ」

美保の体温が暖かい。こうして誰かに抱きしめられたのは初めてでまた涙が出る。

きっと私この世界にいたら笑っていられる。

「あかりは辛いからここに来たんでしょ?だったらわざわざ苦しい方を選ぶ事はないよ」

「……美保…」

私を必要としてくれる人がいる。

私もここにいたい。だけど心が引っ張られる。

現実の世界の私がまだ生きてるとしたら、
どうして私を呼ぶの?

答えなんて決まってる。

「美保。私やりたい事もしたかった事も全部叶った。でも叶えたいと願ったのはここじゃない……
っ」

そうでしょ?

だから私に戻ってきてって言ってるんだよね?

それから私と美保は夜が明けるまでずっと話し続けて泣いたり笑ったり。その間繋いだ手は離さなかった。


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