翼をなくした天使達



………え?今なんて言った?聞き間違い?

だけど蒼井ははっきりと同じ言葉を繰り返す。


「お前は戻れ」

ドクンと心臓が鼓動する。それと同時にどんどん自分も消えていく。待って待って待って。

「戻れって現実世界に?」

「そう。だからお前は同じ場所から飛び降りて元の世界に帰れ」

なんだかそれに違和感を感じた。まるで他人事のような……

「だったら蒼井もでしょ?」

「俺は向こうの俺に呼ばれてねーし、きっと今そこから落ちても戻れそうにない。だからお前だけ行け」

「そ、そんな……」

すると、下から声が聞こえて恐る恐る見ると裏庭の焼却炉にゴミを捨てに来た濱田先生と目が合った。

「こ、紺野!なにしてるんだ、そんな所で!」

確かにこんな場所にいつまでも立ってたら目立つし、登校中の生徒に見つかるのも時間の問題。

「紺野、なにがあったか知らないけど今すぐそっちに行くからジッとしてなさい。いいね!?」

先生はゴミをその場に置いて、急いで走り去った。きっと屋上に向かっているのだろう。

「蒼井、先生に見つかっちゃったしとりあえず
そっちに……」

「ダメだ」

蒼井はさらに私を突き放す。


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