翼をなくした天使達
「紺野っ!」「紺野さん!」
交互で名前を呼ばれてる。大人数人と蒼井じゃ勝てるわけもなくドアは半分開きかけていた。
「蒼井もういいよ……私……」
蒼井はそれでも力いっぱい押し返している。
そして押さえながらこっちを強い目で見た。
「お前ここで行かなかったら現実で逃げてきた自分と同じだぞ!」
「……」
「全部向こうに置いてきたんだろ?捨ててきたんだろ?だったら取り返せ!!」
………取り……返す?
終わったと思ってたけど私はまだ取り返せる?
あの日々に続きがあるとしたら……
私は失ったものを取り戻せるの?
───ドンドンドンッ!!
「なにか悩み事があるならなんでも聞くから、
だからドアを開けなさい!」
濱田先生が懸命に私を呼ぶ。
………どうしよう。私のせいで大騒ぎになってる…
私は悩んでる間にもドアの隙間は徐々に広がって、もう少しで先生の腕が伸びてきそう。
「くそ…っ…」
蒼井の体が前のめりになりドアが開こうとした瞬間、今度は別のざわつきの声が聞こえた。
「こら、やめなさい!」
何故かドアの向こう側で怒鳴る声。
なにが起きたのか分からないけど、蒼井がその隙に体勢を整えた。
「あかり!」「紺野さん!」
先生達が必死で押しているドアの隙間から聞こえた声。顔は見えないけどそれは間違いなく美保と橋本さんだった。