翼をなくした天使達




「やり直せるよ。何度だって。だからもう我慢するな」

「蒼井……」


「笑いたかったら笑えばいいし、
泣きたかったら泣けばいいし、
苦しいなら苦しいと言えばいい。

理想は周りが作るんじゃなくてお前が作るんだよ。大丈夫。俺はお前の味方だ」

その言葉に震えが止まった。

この世界は誰かが作ってくれた理想の世界。

それが神様なのか、助けてくれた蒼井なのか、
絶望の淵に落ちた私なのか、それは誰にも分からない。

ずっと満たされてた
ずっと笑えていた。

苦しい事も悲しい事もなくて、

ここにいればずっと幸せでいられる。でも……

私はゆっくりと立ち上がって体を外に向けた。
徐々に手すりから離れていく指先。この手を離してしまえばもう落ちるだけ。

ふぅ……と深い深呼吸をして、目を閉じた。


私はやりたかった事したかった事、その全てを自分の手で手に入れたい。簡単じゃないし正直怖い。だけど答えを見つけた私はもう迷わない。

体を前に倒して、僅かに触れている指が離れる時、私の耳に届いた蒼井の声。



「紺野、頑張れ」

もうその顔は見えない。

逆さまに落ちていく私の体。

私が変えたい世界はここじゃない。

あの息苦しくて消えてしまえと願ったあの世界なの。

悔しくて泣いたあの時とは違う涙が空に浮いた。


────私向こうで生きてみる。

地面まであと僅か。地面に近付くその1秒前で私の記憶はプツリと切れた。



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