翼をなくした天使達
「ねぇ、あの子……」
ヒソヒソと噂される事は分かっていた。
何せ屋上から飛び降りて自殺未遂した私がまた学校に行ってるのだから。だけど〝逃げない゛と約束したから、私は何を言われても大丈夫。
ひとつだけ大丈夫じゃない事を挙げるとしたら、
あいつがどこにも居ない事。
今日の1限目は急遽、クラス会議が開かれる事になった。濱田先生は手に白い紙を持って教壇に立った。
いつもクラスがうるさくても、どうでもいいみたいな顔していた先生が騒いでる生徒に向かって声を荒げた。
「今日はクラス全員で真剣に話し合いたい事があります」
シーンとした教室で先生が紙を順々に配る。
そこに書いてあったのは《いじめについて》
私が飛び降りた後、最初に見つけたのは濱田先生だったらしい。そして自ら飛び降りた事実からやっと〝いじめ゛を認めて病院に何度も訪れた。
「そのアンケートは今書かなくていい。家に持ち帰ってじっくり向き合って書いて欲しい」
あの世界で起きた事と同じ事が今起きている。
だけどアンケートの項目は細かく増やされ、私が先生に指摘した部分はちゃんと訂正されていた。
そしてあの大嫌いだった濱田先生がみんなの前でボロボロと涙を流してる。
「アンケートは何日経っても構わないから必ず各々がしてきた事、見ていたものを偽らずに書いて欲しい」
あの先生が必死で言っている。こんな時に馬鹿を言ってからかいそうな男子達も珍しく黙っていた。
「なにもしなかった先生も加害者です。
みんなで反省して話し合ってここからもう1度はじめよう」
私は泣かない。
だってこれはあの世界で私が先生に言った事だから。
──────「いじめは絶対許しちゃ駄目です。
だからこれからもちゃんと生徒と向き合って下さい」
ここは現実世界だけど何かが変わっていた。