翼をなくした天使達




「────紺野さんっ!」


花壇に水をあげ終わって帰ろうとした時、誰かに名前を呼ばれた。息をきらせて走ってきたのは……

「………市川さん…」

私の事を捜していたのだろうか?その額には汗が浮かんでいる。


「どうしたの?」

「……っ………紺野さん、ごめんなさい」

市川さんはぐちゃぐちゃの顔で頭を下げた。


「紺野さん、私……紺野さんに助けてもらったのに従わないとまた自分がいじめられるんじゃないかって思って紺野さんにひどい事言った……」

私は市川さんの事も許せないって思ってたけど、
いじめられる恐怖は分かるし、まりえの言いなりになった事も仕方なかったと思う。

それに私、助けた事後悔してないし。

それで地獄の日々が始まってしまったけど、それがなかったら私はあの世界へは行けなかった。

あの世界が私の支え、ううん。
一生の宝物だって思ってる。

「ずっと言えてなかったけど……
私を庇ってくれてありがとう……」

市川さんが泣きながら何度も繰り返した。

「顔上げて。もう十分伝わったから」

「………紺野さん。今さらだって思われても仕方ないし呆れるかもしれないけど………」

「なに?」

「私、紺野さんと友達になりたい……」

私はそれを聞いて笑いそうになった。呆れたからじゃないよ?だってさ、向こうの世界でも美保が「最初に友達になろう」って言ってくれた。

現実でもそれが叶うなんて嬉しくて笑うよ。


「うん、私も市川さんの事知りたい」

現実の市川さんとどんな関係になれるのか、
私はちょっとわくわくしてる。


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