翼をなくした天使達
そして、その帰り道。私は家と反対方向に向かった。
電車に揺られて5つ離れた街へ。そこからバスに乗って総合病院の前に着いた。
広いロビーに高い天井。会計待ちの電光掲示板が絶え間なく表示されていてここら辺では一番大きな病院だ。
外来の待合室を過ぎてエスカレーターで3階へ。
《脳神経外科》と書かれた場所に行き、入院患者がいるフロアに到着した。
廊下の一番突き当たり。603号室の扉をゆっくりと開けると窓からは夕焼けの光が射し込んでいた。
ピッピッと響く心電図の音。
私はそのベッドに近付いて近くにある丸い椅子に腰掛けた。
「あんたの寝顔、そろそろ見飽きてきたよ」
そう眠る〝蒼井゛に声をかけた。
目覚めてすぐ蒼井の事を尋ねたら蒼井は別の病院にいると聞かされた。あの日、私を庇うように落ちた蒼井は脳挫傷の重症で息もわずかしかしていなかったと聞いた。
そしてこの大きな総合病院に運ばれて手術をして一命は取り止めたけどいまだに目を覚まさない。
先生は目覚めるのは明日かもしれないし、1年後かもしれないし、ずっとこのままかもしれないと言った。
身体が動かせるようになってからは毎日こうして会いに来てるけど蒼井はピクリともしない。
………私は蒼井のおかげで骨さえも折れてなかった。