翼をなくした天使達
誰もいなくなった病室でまた蒼井と二人きり。
両親の事、濱田先生の事、まりえの事、市川さんの事。沢山たくさん話したい事があるよ。
蒼井はきっと良かったじゃん、とか一言だけしか言わない奴だけどそれでもいいんだ。
私は蒼井だから聞いて欲しい。
そっと頬に触れようとした時、ハッ!と我に返った。
そういえば蒼井は私の頬をつねったり頭を叩いたり手を引っ張ったりするけど、私から蒼井に触れた事はない。
恐る恐る顔をツンとしてみようとしたけど、なんだかギロリと睨まれそうで怖いかも………。
うーん………手ならいいかな?
手ぐらい握ってもいいよね。触れていれば私の声が届くかもしれないし。
───「お前まだなんにも思い出さねーの?」
初めて会ったのはあの雨の中。すごく怖い顔をして、言っている意味が分からないし高圧的で関わりたくないって思った。
いつもはっきり物事を言うし私が悩んでても冷めた目しかしなくて「俺ウジウジ考えてる奴嫌いなんだよね。普通にぶっ飛ばしたくなる」って言われた時はこっちがぶっ飛ばしたくなった。
一匹オオカミで人に関心がないくせに私を助けようと屋上から落ちて、それが条件反射だって笑う。
苦手だった。ものすごく。