翼をなくした天使達



だけど蒼井はいつだって私の背中を押してくれた。

苦しくてどうしようもないっていうんなら相談くらい乗ってやると言ってくれた事。

いい加減自分を褒めろよって言ってくれた事。

いつもブスブスって言うくせにあの時名前呼んでくれた事。


─────「紺野、頑張れ」

もしかして聞こえてないと思ってる?

はじめて名前で呼んでくれた事嬉しかった。

あの世界で蒼井が居なかったら私は今ここにいない。

私はまだなにも蒼井に返せてないよ。

だから私と一緒に現実で生きよう。何年経っても私待つから。ずっとずっと待つから…………


「………お…い……おい」

なんか遠くで声がする。
……………気のせい?


「おい、ブス」

ビクッ!となって私は椅子から転げ落ちた。

………痛たた。あれ?私ひょっとしてうたた寝してた?ってかお尻強打してすごい痛い………

と、立ち上がるとオレンジ色の夕日の中に影が見えた。それはこっちをジッと見つめている。

「ダサッ。なに今の。3回は思い出して笑えそう


「え……」

「つーかお前さ、普通はもう少しソフトに握るんじゃねーの?すげー手が痛いんだけど」

確かにそれは蒼井の声。

嘘でしょ……私また夢を見てるの?

ゆっくりと確認するように近付くとやっと逆光から反れて、今度ははっきりと見えた顔。

そこにはベッドに上半身を起こして座る蒼井の姿。


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