翼をなくした天使達
「あかりー!」
ゴールをすると美保が清々しい顔で寄ってきた。
多分15分くらい前に着いて汗すら顔には残ってない。
「私3位だったよ!ってかめっちゃ疲れてない?水飲みにいく?」
疲れるよ。嫌いなマラソンだもん。でも心が晴れないのはそのせいだけじゃない。
私も無理してあかりに付いて行けば良かった。そしたらあの場面に出くわさなくて済んだのに……
「授業のチャイムが鳴るまでは休憩してていいって先生言ってたよ。ってか先生だけチャリとかズルすぎだよね。なんかヘルニア持ちらしいよ~」
美保の声が耳に入ってこない。
橋本さんはゴールしたかな……。ってか具合悪い事先生に言った方がいいよね……あ、でもあの3人が近くにいる。
ズキンズキンと痛む頭。
また偏頭痛だ……。この痛みの原因は分からないけど心がモヤっとしたり乱れたりすると現れる。
もしかしてストレスとか?
「あ、そういえばさー」
美保が何かを言いかけた時、私はあるものに気付いた。そこから目が離せなくて気付くと立ち上がってその場所に向かってた。
「え?あかり?どうしたの?」
まだチャイムが鳴る3分前。
マラソンの呼吸が整っていないのに私はまた走ってた。