翼をなくした天使達



「………なんだったと思う?」

とりあえず体験した事を蒼井に伝えたあとで聞いてみた。


「なにが」

「だから今朝の事!」

相談なんてしたくないけど話せるのはこいつしかいないし。しかもせっかく話したのにポリポリと顔を掻いてる姿にムッとする。


「お前の忘れてる記憶だろ。つーか自分で分かってるくせにいちいち聞くな」

なにそれ。いいじゃん別に。

そもそも本当にあれは私の記憶なんだろうか。記憶がなくなってる実感も蒼井の言ってる事もいまだに半信半疑なんだけど………


───前から思ってたんだけどあかりってうざいよね。

だけどあの声。

なんだかどこかで聞き覚えがある。

一体誰……………するとまたズキンズキンと突然頭が痛みだした。


「どうした?」

一瞬貧血気味になったけど私の顔を覗きこむ蒼井が見えて少しだけ血の気が戻ってきた。

「………ちょっと偏頭痛がしただけ。最近たまにあるんだよね。考え事したり何かを思いだそうとすると必ずくる」

頭を使うなって意味なのかな。だとしたらどんだけ私の頭は貧弱なの………。蒼井は「ふーん」と言いながらくるくる回る先生の椅子に座った。

「思い出したくないって事だったりして?」

はははっと作り笑いをすると蒼井が怖い顔をした。

……ただの冗談じゃん。そりゃ蒼井は何がなんでも思い出せって思ってるんだろうけとさ。

「逆じゃね?」

「へ?」

「思い出したいから痛いんじゃねーの。一種の記憶喪失みたいなもんじゃん。こじ開けようとしたらまぁ、頭痛くらいするんじゃん?」

意外だった。

偏頭痛なんてダサっとか笑われるって思ってたから。

「蒼井は……」

私はある事を聞こうとしたけど昼休みが終わるチャイムが鳴ってしまった。


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