翼をなくした天使達
橋本さんは地面にしり餅をついて持っていたカバンの中身がその場に散らばった。
それを見てまたゲラゲラと笑いが起きる。
「あーぁ、本当につまんない奴。うざいから帰りみんなでマックでも食べて帰ろ~」
沙織の言葉で野次馬達が帰っていく。
「賭けに勝った人はこのあと配当するね。
まぁ、そのお金で奢ってもらうつもりだけど」
「「なにそれ、ずるーい!」」
集団の中でも沙織は一目置かれていてまるで女王様。
学校ってすごく楽しいところだって思ってた。
でも本当はすごく怖いところなのかもしれない。
ううん、きっと私はそれを知っていたはず。
だって橋本さんを見ると胸が痛くて苦しくて、
黒い渦に飲み込まれそうになる。
「あかり~?私達もマックに行こうよ」
美保が私の手を引いた。
もしもここが仮の世界で夢の中なら、一冊の本のように決められたシナリオでみんな動いているのかもしれない。
私は必死で〝ここは現実じゃない゛と唱えながらも散らばった教科書を拾う橋本さんから目が離せない。
「あかり?早く行くよ?」
どうしよう。
いや、現実じゃないならどうしようは止めてもいいんじゃない?また知らん顔をしてチクチクと後悔するぐらいなら私もあいつみたいに言いたい事を言ってもいい…よね?
「ごめん、美保」
「え……?」
私は美保の手を振り払って橋本さんの元に行った。