翼をなくした天使達
まるで心がここにないみたいにソワソワする。
何か大事な事を思い出せそうな気がするけど、思い出したくないと誰かが叫んでる気がする。
私のなくしてる記憶ってなに?
そもそもなんで私はそうなってしまったんだろう。
「おい。ボーッと突っ立ってんじゃねーよ」
学校に向かう通学路の道。私は誰かにぶつかられて振り向くとそこには機嫌が悪い蒼井の姿。
「ったく。歩くのおせーし走ってもおせーし。
お前本当亀だな。亀」
口を開けば文句ばかり。パーカーを着て靴のかかとを踏み潰して歩く蒼井に私はあっさりと抜かされた。
……ん?私一瞬蒼井を見てホッとしなかった?
それはさすがにない、と自分に言い聞かせて歩くスピードを少し上げる。
「なんであんたがこんな所歩いてんの?家こっちだったの?」
「全然逆。昨日ネカフェに泊まってそのまま来たから」
ネットカフェ?もしかして駅前の?
今のネットカフェって漫画とか食べ物とかいっぱいあって個室だしシャワーもあるって聞いた事あるけど……
「そうゆーのって次の日が休みの時に行くんじゃないの?逆に疲れそう」
「疲れるってか足伸ばせないから体が痛てぇ」
「あー無駄に背高いもんね」
「お前はチビだよな。今時の中学生の方が色気あんのに虚しくならない?」
なんで色気の話になったのか分からない。
「あぁーまじで肩とか痛い。お前後で揉め」
「はぁ?なんで私が?」
「ぼっちになったんじゃねーの?」
「な、なってないし、なったとしても肩なんて揉むわけないじゃん」
「へぇ、ならなくて済んだなら良かったじゃん」
あれ、一応心配とかしてくれてたのかな?
いや、こいつにそんな優しさがあったなら悩んでる私にぶっ飛ばしたくなるなんて言わない。