翼をなくした天使達
「蒼井はさ、最近変わった事とかないの?」
一定の距離を保ちながらそんな事を聞いてみた。
「ねぇな」
返ってきたのはたったそれだけ。
スタスタと地面を擦るように歩く蒼井の足音は上履きの時と変わらないんだなぁ、とか思いながらも頭では違う事を考えていた。
「………私最近フラッシュバックするんだよね。
ほら、前に言ってた砂嵐みたいなやつ」
最初は雨の中で。次は橋本さんを助けた時で3回目は昨日の美保のアレ。
「今さらだけど本当にそれって私の記憶だと思う?」
ほら、夢だってその日の出来事とかテレビの内容とか少なからず影響してるやつあるじゃん。そんな感じで色々な事がごちゃ混ぜになってるんじゃないかって。
「はは。知らねーよ。お前の事だろ?自分で考えろ」
「なにそれ。早く記憶を思い出せとか急かしといて結局相談しても意味ないじゃん」
「じゃ、どんな内容なんだよ?その砂嵐みたいなやつは」
はや歩きだった蒼井が立ち止まった。
それは面倒くせーって顔なのか、仕方ないかと諦めてる顔なのか判断できないけどそんな事はどうでもいい。
「内容は……言いたくない」
「はぁ?喧嘩売ってんの?お前」
「と、とにかく今は言いたくないのっ!」
私は呆れてる蒼井を追い越して歩き去った。