翼をなくした天使達
「………もし、私の記憶が完全に戻ったら私達はどうなるの?」
やっと頭の整理がついて声を出す事ができた。
「元に戻るかここが消滅するか、それは知らねーけどこんなワケわかんない所にいるよりはいいだろ」
ワケわかんない所………
蒼井にとってはそうだよね。なんの変化もなくて誰も変わってない。現在の続きのようだけどここは全くの別世界で……死んでようと生きてようと、ここにいる必要はない。
だけど………
「も、元の世界がどんな所か知らないけどここってそんなにダメな所かな?ほら、学校とか友達関係とか面倒な事はあるけどもし消滅しちゃったらここにいる人達は……」
「あ?なに言ってんの?人じゃねーよ。ここに居るのはお前が作り出した人の形をしてるだけのもの」
「も、ものって……」
「同じ人間は二人居ない。ここにいる奴らは変わった奴も含めてみーんな現在世界で生きてるよ。
そう考えると気持ち悪いだろ?」
「気持ち悪いってそんな事……」
と、その時。ガラッ!と保健室のドアが開いて私は反射的にベッドへ隠れた。
「は?おい、てめぇ…!」
「シーーー」
足音は靴底がある先生ではなく私達と同じ上履き。
隠れる必要はなかったかもしれないけど男女が二人きりで居たら有りもしない噂がたつし。しかも相手は蒼井だし。
でもあれ?ベッドに潜り込んだ今の方が状況はまずくない……?