翼をなくした天使達
「おい、紺野。今日日直だよな?これ日誌だからちゃんと書いて放課後提出しろよ」
体育が終わってトイレから戻る私に濱田先生が声をかけてきた。
「あ、そうそう!この前スーパーで紺野のお母さん見掛けたよ」
先生は思い出したように話を続ける。
「向こうから気付いて声をかけてもらって、余分にあるからって卵の割り引き券もくれたよ。とても気さくで優しいお母さんだよな。宜しく言っといてくれよ」
………卵。そういえば多めに買ってきた日があったっけ。
濱田先生はその後もその卵で親子丼を作ったとかペラペラと喋り続けている。
頭に入ってこないのは興味がないからではなく別の事を考えているから。
〝私といると紺野さんがいじめられちゃう゛
同じ事を美保にも言われたし、自分自身がそれを1番気にしていた。だからあれから橋本さんに声をかけなかったし、助けなきゃというより助けた後の事をずっとずっと気にしていたんだ。
でも美保や自分でそれを思うより、
本人の橋本さんにその言葉を言われたらなんだかガツンと殴られたような気がした。
きっと私は誰よりも知ってるはず。
誰にも言えなくて一人で戦う事がどんなに辛いか。
「あの、先生……話したい事が………」
「ん?」