翼をなくした天使達



ゴロゴロと連続ドラマを見ていたらあっという間に夕方になった。お母さんはずっと掃除機をかけたり洗濯物を畳んだり忙しそうで今は台所で包丁の音を響かせている。

この音ってなんだか安心する。

沢山寝たはずなのにまたウトウトしてきて目を閉じかけそうになった時、ガシャンッッ!!と何かが割れる音がした。

慌てて飛び起きると、どうやらお母さんがお皿を割ったようだ。


「もう何してるの?」

「手が滑っちゃって……」

「うわ、お皿粉々じゃん。あっちにも破片飛び散ってるし」

お母さんは急いで掃除機を取りに行った。このお皿っていつも使ってるやつじゃん。あーぁ……。

私は拾えそうな大きめの破片に手を伸ばして、尖った部分がチクリと手に刺さる。

「痛っ……」

小さな傷口からじわりじわりと血が見えてきて、
そういえば私血とか見ると貧血……と思った時には遅くて、スーッと意識が後ろに遠退いていく。


───もうあなたと結婚なんてするんじゃなかった。

何故か遠くでお母さんの声がする。


『それはこっちの台詞だよ。家の事もろくにやらないくせに偉そうな事言うな』

『あなただけの稼ぎじゃ生活していけないからでしょ!文句言うなら料理や掃除はあなたがやってよ』

『家事は女の仕事だろ』

『だったら私が働きにいかなくて済むようにもっと頑張ってよ!』

やめて。毎日毎日喧嘩ばっかり。



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