翼をなくした天使達
「あの、ありがとう……」
恐る恐るお礼を言うと蒼井は面倒くさそうにベンチに座った。
「んで?なんなの?助けてって」
蒼井が真剣な顔でこっちを見ている。電話したのは私の方なのに素直になれない悪いクセが出た。
「えっと……またフラッシュバックしちゃって。気が付いたら電話してた。あはは」
「……」
「と、ところでよく私がいる場所分かったね。最初の頃にうちの周りウロウロしてた不審者って蒼井でしょ?もしかして家の場所とか調べたの?うちから近い公園ってここしかないもんね!探してくれるならもっと分かりづらい場所に居たら良かったかな~」
口が勝手に動く。
だって家の事とか誰かに話すのって勇気がいる。
今のお母さんとお父さんの事すごく大好きだったのに全てが偽物だったんだって思ったら悲しみを通り越して恐くなった。
「ヘラヘラしてんじゃねーよ。お前の作り笑顔なんてすぐ分かるんだよ。うぜーから止めろ」
「……」
私はどうして蒼井に電話したのかな?
助けてなんて人生で一度も言った事ないのに最初にその言葉が出てしまった。口は悪いけど私の為に来てくれた。
蒼井になら虚勢を張らなくてもいい?
私は蒼井から少し離れてブランコに乗った。
このブランコ覚えてる……。
お父さんが私を優しく押してお母さんはその姿をビデオに撮る。そんな記憶が頭にあるのにそれはきっと私の理想であり、そうだったら良かったのにという願い。