翼をなくした天使達
「お母さんもお父さんも私が作り出した偽物だった」
記憶の糸を引っ張るとまるで芋づる式にスルスルと蘇る現実世界の事。
「本当の家はね、玄関を開けるだけでため息が出るくらい嫌な所で離婚したお父さんは1度も私に会いに来ないし、お母さんに〝あかり゛って名前で呼ばれたのがいつだったか思い出せないくらい冷めた家族だったの」
学校で嫌な事があっても話せない。
むしろ私の顔を見ようとしないお母さんを見るのが辛くて辛くて仕方がなかった。
「私馬鹿だよね。今まで気付かないなんてさ。
ここは蒼井の言う通り都合のいい私の妄想の世界だった」
ポロポロと涙が流れて渇いた地面にそれは落ちた。
「今の家族も学校も友達もみーんな偽物。なんか笑えるぐらいどうでもよくなっちゃった」
私は涙を拭いてブランコを思いっきり蹴った。
錆びた鎖がキィィと鳴って不安定だけどそんなの関係ない。
「ねぇ私達死んじゃったならさ、ここじゃない別の場所に行こうよ。その方法私も頑張って探すし」
「……」
「私完全に記憶は戻ってないけど悪い事はしてないと思うんだ。だから天国とか本当にあるなら行きたいなぁ」
昔本で読んだ。死んだら自分が望む姿になれてお金もないのにご飯が食べれてみんな幸せに暮らせるんだって。
生まれ変わるタイミングも自分で選べるし別に人間になれなくてもいいって。
私も人はもう嫌だな。出来るなら鳥とか空が飛べるものがいい。