翼をなくした天使達
「先生に言ったのあかりでしょ?」
また人気のない廊下。1回目ここに呼び出された時はここまで怖い顔はしてなかった。
無言の私に美保はため息をつく。
「なんでそんな事したの?私言ったよね?関係ないんだから見てみないフリしようって」
「……」
言われたよ。忘れたわけじゃない。でもあの時はどうしても見ないフリが出来なかった。
「こんな事して何になるの?自分が損するだけじゃん。沙織だって黙ってないよ」
すでに始まった犯人探し。ひとつひとつ可能性を消していったらいずれ私の所に来る。顔に出やすいタイプの私は沙織の追及から逃れられないだろう。
「なに考えてんの?最近のあかり変だよ」
「……」
「関わらないでって言ったのにわざわざあんな事するなんてあり得ない。理解できないよ」
今の美保は私が作った美保で本物じゃない。
本当はとても暗くて真面目で今とは真逆。現実も大切じゃないけど今も別に大切じゃない。
誰がいじめられてて、誰がいじめてるとか、
ムキになって怒る美保ももうどうでもいいのかもしれない。
「なに黙ってんの?なんとか言いなよ」
「………」
「あっそ。分かった。もうあかりの事なんて知らないから。沙織に目付けられてもその後いじめられても自分が悪いんだからね。じゃ」
美保はそう言って私から離れていった。