翼をなくした天使達
蒼井は私のお弁当を米粒ひとつ残さずに完食してコーヒー牛乳を一気に飲み干していた。
「ってかよくコーヒー牛乳とご飯一緒に食べれるよね」
「は?野菜ジュースの方が俺には考えられないけど?」
私の手には緑黄野菜の紙パック。話を反らしてみたけれどやっぱり気持ちは少し沈んでる。
「……私って本当馬鹿だよね」
「なに急に?」
「いじめの事なんて放っておけば良かった。ここは現実じゃないんだし時間を戻せるなら余計な事はするなって言いたいよ」
何故かあの時は私がなんとかしてあげなくちゃって責任感のようなものが芽生えた。
「この世界で必死になる事はない。悩んだりするのだって時間の無駄だよ本当に」
「随分な変わりようだな。俺がここを気持ち悪い世界だって言ったらすげーイラついてたくせに」
あの時はまだ戻る記憶が途切れ途切れで確信が持てなかったから。でも家族の事を思い出して今までの事が作り物だったんだって気付いたら満たされていた心がどこかへ行った。
「つーかさ、どうでもいいとか言って落ち込んでるのって支離滅裂じゃね?お前のお友達もクラスの奴らも偽物ならここで一人になってもなに言われてもいいんじゃねーの?」
別に落ち込んでるわけじゃない。
ただ方法が見つからない以上ここに居るしかないんだし、これからどうしようか考えていただけ。
それに…
「友達がひとりもいない蒼井には言われたくない」
「は?」
「蒼井はひとりでいられない人をすごい見下してるけど、ひとりでも平気な事が強いってわけじゃないと思う。いつも私の事ばっかりだけど自分はどうなの?そうやってはっきり言い過ぎるからみんなから避けられるんじゃない?」
勢いに任せて言った後でヤバいと気付いた。
私また蒼井に八つ当たりしてない?
「………ご、ごめん」
恐ろしくて顔は見れないけどキレられる前に謝っておこう。
「はっ。お前ごときの言葉で傷つかねーから」
蒼井は余裕な顔で笑った。それが少し悔しかった。