翼をなくした天使達



「私も手伝っていい?」

「うん。どうぞ」

手のひらに乗せられたデイジーの種。この花が咲くところは見られないかもしれないけど希望なら私も欲しい。

「紺野さん花は好き?」
「うーん、花ってゆーか花柄は好きだけど」

「え?本当?私も花柄好きなの!」


……あれ、この会話どこかでした覚えがある。
夢?気のせい?どこだっけ?

「花柄のもの見るとついつい欲しくなっちゃって。この前も可愛い傘があってね」

変だな。橋本さんの横顔がダブって見える。また貧血かな。目を強くゴシゴシと擦ったら視界が突然暗くなった。


────「ひらがなの名前同じだね」

いつものあの声。

嫌な事しか言わない尖った声はなんだか穏やかでとても優しく感じられた。

『せっかく同じクラスで席も近いんだし友達にならない?今日から下の名前で呼んでもいい?』

『う、うん』

クラス替えしたばかりの教室。

人見知りではないけどなかなか自分から声をかけられなかった私に友達になろうと言ってくれた。



『私は橋本まりえ。宜しくね』

私達は握手をした。これからキラキラとした新学期が始まると胸を踊らせていた2年の春の事。


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