翼をなくした天使達



『ってか俺らのクラス川で釣りやるんだ。向こうで釣り竿貸してくれるらしくてさ』

きっとまりえが実行委員になってたら釣りをやる事を提案しただろう。みんな他クラスの男子と仲いいし班で行動するより楽しそうだし。

『えーいいな。うちなんて最悪……』

『あ、そういえばお前のクラスの実行委員って
市川美保だっけ?』

まりえの言葉が終わる前に男子は遮る。

『そうだけど…』

まりえの顔が一瞬曇ったのを私は見逃さなかった。

『なんか市川ってエロくね?』
『はぁ!?』

男子達が好きな下ネタトーク。まりえだっていつもしてるけど今回はそれに乗らない。

『足ほせーし顔ちいせーし。磨けば光る原石的な感じ?』

男子目線だと市川さんはそう映るんだ。

私も市川さんは前から綺麗だと思ってたけど真面目で話しづらいから絡んだ事は一度もない。

『俺あーゆーツンとした人タイプなんだよね~。
なんか怒られたいってゆーか分かんないかな。この魅力が』

怒られたい気持ちは分からないけど男子って影のある人の方が好きって聞くから市川さんは密かに人気があるのかもしれない。でも………

『実行委員会で一緒だし声かけてみようかな~』
『あんな真面目のどこがいいの?趣味わる』

まりえの顔が怖かった。

だってこの人の事まりえは好きなんだし、市川さんの事褒めたりタイプだなんて言われたら面白くないはず。

『いや、お前みたいに見た目ギャルでギャップがない方が魅力ねーじゃん?市川さんを見習って色気出せよ』

『……』

とどめの一撃。

こんな男のどこがいいんだろう?まりえはモテるんだし違う人を探した方がいい。


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