翼をなくした天使達



次の日学校に行くと市川さんの机の周りに女子が集まっていた。

『どうしたの?』

遠目で腕組みをしているまりえに聞いてみた。

なんでも1人の男子が市川さんのお弁当箱の包みが変わった柄だって騒いでそれを聞いた女子が集まりだしたらしい。

『ウケる!これなに柄?』
『うちのばあちゃんこの柄の風呂敷持ってるし』

ゲラゲラと笑い出すみんな。

市川さんの顔は真っ赤で今にも泣きそうな顔をしていた。

だけどすぐに担任が来てホームルームが始まるとみんな嘘のように市川さんから離れた。

お調子者の男子ってクラスに1人はいるよね。
人が持ってる物をいちいちけなして、騒ぐだけ騒いだら後は知らん顔。

ただでえ市川さんいじられてるのに、そんな事言ったら女子が乗っかるに決まってんじゃん。

本当そういう男子って嫌い。


だけど次の日も市川さんいじりは続いた。

耳の形がおかしいとか、くしゃみがウケるとかまるで博物館の置物のようにみんなが市川さんの
〝何か゛を探した。

最初はみんな面白がっていたけど男子はすぐに飽きて今の興味はスマホの課金ゲーム。休み時間になるとすかさずアプリを開いて無言でやっている。

ちょっとは静かになったし市川さんの事も落ち着いて良かったと思っていたのにそれは目の前で起こった。

───ガシャン!と市川さんがつまずいて、持っていたペンケースの中身が床に散らばった。

『あーぁ、なにやってんの?』

足元に落ちるシャーペンを見ながらまりえが言う。

…………ってか、ってかさ……
今まりえが足を引っ掛けなかった?

いつも足を組んでるしたまたまそれに市川さんがつまずいただけかな?

思い過ごしならいいと思ってたのに、私の嫌な予感は当たってしまった。


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